ケニアのタクシードライバーに融資を——査定額300億円を叩き出した起業家の挑戦【リアルバリュー】

九条辰季

堀江貴文さん、溝口勇児さん、三崎優太さんの3人がチェアマンを務める「リアルバリュー」。※ここ最近は三崎さんが離脱中。

今回取り上げるのは、ケニアでタクシードライバー向けの自動車ローン事業を手がける、HAKKI AFRICA代表・小林玲司さんの回です。

自己査定97億円に対し、番組が下した査定額はなんと300億円。金利をめぐる白熱した議論も含め、印象に残ったポイントをまとめました。

舞台はケニア、挑戦者はシリアル・アントレプレナー

小林さんは学生時代から起業を重ね、これまでに3社を立ち上げては売却してきた、いわゆる「シリアル・アントレプレナー」です。

そんな小林さんが4社目として選んだ舞台は、日本ではなくケニア。学生時代にアフリカを縦断した際、選択肢に恵まれた日本人と可能性から断絶されたケニアの人々との「可能性の差」を目の当たりにし、大きな衝撃を受けたそうです。

その経験から2018年にケニアへ移住し、6年間現地に根を張ってきました。

事業の核心は「信用スコアリング」

HAKKI AFRICAが手がけるのは、ケニアのタクシードライバー向けの自動車ローン事業です。

ケニアでは銀行の与信審査が厳しく、多くの人が車を買うためのローンを組めません。

そこで小林さんが目をつけたのが、現地で広く普及しているモバイルマネー「M-PESA」の利用履歴でした。過去の取引データを解析することで、その人の信用度を独自にスコアリングし、無担保での融資を可能にしたのです。

市場規模は約2.5兆円。不良債権率はわずか0.53%(将来的には1.6〜2%程度を想定)と、数字だけ見ても堅実な事業設計であることが伝わってきます。

実績も申し分なく、岸田首相や小池都知事、金融庁からの表彰、さらには国連のユースコラボ最優秀賞まで受賞しています。

「ぼったくりでは?」金利をめぐる白熱した議論

小林さんの話に多くのマフィアたちが興味を示しましたが、もちろん、良い話ばかりではありません。特に議論が白熱したのが金利についてです。

競合他社が年利70〜80%という水準の中、HAKKI AFRICAはそれよりも10〜20%低い金利を設定しています。しかし、マフィアの一人からは「それでも高すぎるのでは、ぼったくりでは」という厳しい指摘が飛びます。

これに対し小林さんは、日本の高度経済成長期の金利水準を例に挙げながら、発展途上国特有のインフレ環境下ではこの水準が妥当であり、経済発展とともに下がっていく可能性を説明していました。

また、今後の海外展開において「現地で実務を動かす人材は、必ずしも日本人である必要はないのでは」という質問も飛びました。

小林さんは「ローカル人材だけでなく、ある程度人種が混じった方がダイバーシティによって不正が起きにくい」との考えを示しつつ、日本人やヨーロピアンの関与にも一定の意義を見出しているようで、単純な二元論ではない現場感覚が垣間見えました。

資金の裏付けについても明瞭な回答を提示

事業のポテンシャルには好意的な声が多く上がった一方で、「金融のバックグラウンドがない中、ファイナンスで本当に勝ち切れるのか」という鋭い質問も飛びました。

これに対し小林さんは、すでに銀行2社とノンバンク1社がシェアホルダーとして参加していること、さらに南アフリカとアメリカのファンドから合計で60億円規模のコミットを得ていることを明かしました。

信用スコアリングという技術面だけでなく、資金調達という「肝」の部分にも既に一定の裏付けがあることが示された場面でした。

なぜ次はインドなのか

「アフリカに集中すべきでは」という質問には、小林さんは意外にも冷静な市場分析で応じました。

アフリカは54カ国に及ぶ広大な地域である一方、内戦リスクや感染症リスクなどを踏まえると、実際にビジネスとして展開しやすい国は限られているといいます。

そこで並行して準備を進めているのが、人口規模で圧倒的な成長可能性を持つインドと、南アフリカでの展開です。

現地の実働人材について「日本人である必要はない」と語りつつも、不正防止の観点から人種の多様性は意識したいという、現場ならではのバランス感覚も示されていました。

さらに番組終盤では、企業法務の専門家である立花さんから「資金供給に加えて現地に財閥や現地法人を絡め、資金が現地にも還元される仕組みを作るべき」という提案が、インフルエンサーマーケティングの専門家・森さんからは「金利の感覚の差を切り口に、個人SNSを活用すれば認知が広がるのでは」という提案がそれぞれ寄せられました。

自己査定97億円→番組査定300億円という結果

一連の質疑を経て、番組が下した査定額(リアルバリュー)はなんと300億円。

小林さん自身が発表した自己査定額97億円を大きく上回る結果となり、満場一致で「リアルバリュークラブ」への特別枠認定(通常1000万円の入会金が免除)を勝ち取りました。

感想:「儲かるかどうか」より「意志の強さ」が試される番組

見ていて感じたのは、この番組で本当に評価されているのは事業計画の緻密さそのものよりも、「本人の覚悟」や「なぜそれをやるのか」という部分だという点です。

小林さんへの質問も、数字の妥当性を確認しつつ、最終的には「なぜアフリカなのか」「なぜ日本での成功を捨ててまで挑むのか」という、人物そのものへの問いに収束していったように思います。

個人的に印象に残ったのは、金利についての議論です。「誠実な努力が報われる世界を」と語る一方で、現地の水準からすれば低金利とはいえ、日本の感覚からすると高く感じる金利を設定している——。

この矛盾とも取れる部分を番組側がきちんと突っ込んでいたのは、単なる称賛一色の番組ではないという証だと感じました。

フリーライターとして日々さまざまなクライアントワークに向き合っている身としても、「自分がやっている仕事の先に、誰の生活があるのか」を問い直すきっかけになる回でした。

派手な査定額の数字以上に、6年間ケニアに住み続けてきたという事実の重みが、理想論だけではない一番の説得力になっていたように思います。

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この記事を書いた人

九条辰季

「自分らしく生きる」をモットーに、Webマーケティング記事や広告・デザインまで幅広く執筆する多趣味、雑食系ライターです。 自身の経験をもとに、みなさんが彩りあるキャリアプランを描くお手伝いができればと思います!