「令和の虎」で全虎から出資を勝ち取る、いわゆる「完全ALL」。数ある挑戦者の中でもひときわ目を引くこの快挙を達成したのが、AIを活用した不動産デジタルステージングサービスを手がける株式会社RealtyBank代表取締役・川上将司さんです。
家具のない空室写真に、AIで生成した家具や小物を合成し、部屋をより魅力的に見せる「デジタルステージング」。
アメリカでは一般的な手法として普及していますが、日本ではまだ発展途上の分野です。
RealtyBankはこの独自AIサービスをすでに導入社数2,800社超にまで広げ、令和の虎出演時には全虎から100万円ずつ、計500万円の出資を獲得しました。
放送から1ヶ月あまりが経った今回、川上さんに出演を決めた経緯から収録現場の裏側、放送後の反響まで、じっくりお話を伺いました。
目次
「認知拡大」のための出演、資金調達が目的ではなかった

――そもそも、令和の虎への出演を決めたきっかけはなんだったんでしょうか?
「多くの業界関係者の方に知っていただきたい、という思いで出演しました」
川上さんによれば、出演の最大の目的は資金調達ではなく認知拡大にあったといいます。RealtyBankはこれまで大きな資金調達を行わず、自社資金で事業を運営してきました。
「別にどこかから大きく資金調達をして今事業を運営しているわけではないんですけど、それなりにスピード感を持って事業拡大していきたいという思いでやっています」
不動産業界の中でもニッチなサービスであるからこそ、番組内で指名する虎についても戦略的な判断があったそうです。
「不動産業界の方が虎にいてくれないと、不動産業界の中でもニッチなサービスなので、それが伝わらないと意味がないなと思って、業界経験のある方に虎にいてほしいと思って指名をしました」
指名したのは寺田社長と安藤社長のお二人。結果的に出演が叶ったのは寺田社長お一人でしたが、「一人でも不動産関係者がいてくれれば」という狙い通りの形になったといいます。
準備で一番大変だったのは「資料の作り直し」

出演にあたって最も苦労したのは、プレゼン資料の作成だったと川上さんは振り返ります。
「面談の時に、一般の不動産業界経験者じゃない方でもわかるような形にしてほしいということで、全部で4回から5回くらい資料の変更を行いましたね」
番組運営側からのフィードバックを受けながら、専門的な内容を一般の人にもわかりやすく伝える資料へと作り直す作業が続いたそうです。
「普段のプレゼンって、不動産業界人にサービスを説明するので、一般の人に説明するのとはちょっと違うんです」
ぶっつけ本番の収録現場、印象に残った虎の一言

収録の実態について尋ねると、川上さんが真っ先に挙げたのは「本当にぶっつけ本番」だったという驚きでした。
「虎の方たちとは会う5分前に資料を渡して、本当にガチャって扉を開けて入って、そこでもうプレゼンするみたいな。事前打ち合わせとかもなくて、ガチのものなんだっていうのがちょっとびっくりしたところですかね」
ただ、日々の営業活動で幾度となく想定問答を重ねてきた川上さんにとって、番組内で受けた質問自体に大きな驚きはなかったといいます。
「毎日5回、6回と同じ話をするわけですよね。そこで出てくるいろんな質問に対するカウンタートークはいろいろなパターンで用意して臨みますので、そういう意味では想定外な質問はなかったんですよね」
もっとも印象に残っているのは、後半で虎の一人から飛び出した「俺だったら一瞬で真似できる」という発言だったそうです。
「新規参入は多いんですよ。ただ実際にやってみると難しくて…。私たちも七年やっていますが、入っては消えていく会社をたくさん見てきました」と川上さん。真似のしやすさをめぐる指摘は、専門性の高いサービスにはよくある反応だと振り返ります。
なお、限られた放送時間の中では、サービス内容の紹介は全体の三分の一程度にとどまったといいます。
「本来だともっと使えるものとか、使っていただいてるサービスがあるんですけど、『実際の今の利用者がこういう風に使って成功してるんです』みたいなところをお伝えできなかったのは、少し心残りですね」
営業ツールとして機能した放送、提案数はほぼ倍増

放送後の反響は、川上さんの想像以上だったといいます。
「メールの署名欄にも『6月1日令和の虎出演』みたいな感じで入れていて、営業ツールとしてかなり活用していますね。やってよかったなと思っていますよ」
既存の顧客から久しぶりに連絡が入り、そこから契約に至ったケースもあったそうです。
「放送後は「番組見たよ」って、めちゃめちゃ言われました。わざわざ電話をくれる人とかも何十人もいましたね。久しぶりにご連絡いただいて、そこから契約につながったケースなんかもありました」
数字の面でも変化がありました。月間の提案機会は放送前の約二十件から倍近くまで増加したといいます。
「成約率はあんまり変わらないんですけど。ただ、提案する数は増えましたね。明らかに」
また、他メディアからの取材依頼や、M&A・VC関係からの問い合わせも増えたそうです。
「会社売却の予定はありませんか、みたいな話も増えましたね。『みんな見てるんだな~』と思いながら(笑)」
目指すは「バーティカルAI」のトップシェア

今後3〜5年の展望について、川上さんは日本国内で3,000〜4,000規模のマーケット獲得を目標に掲げます。
「ChatGPTやClaudeとか、そういったところではできない専門性のバーティカルなAIという分野で、ニッチですけれども、トップを取っていきたいなと思っています」
その優位性の源泉は、独自に蓄積してきた学習データにあるといいます。
「日本の室内画像で学習データを作って、それをユーザーに提供しているというところが圧倒的な強みですね」
すでに複数の大手企業との契約も進んでおり、今後はより多くの企業への導入拡大を見据えているそうです。アメリカではすでに、物件写真にステージング画像が並ぶのが当たり前になっていると川上さんは語ります。
「アメリカだと結構もうそれが当たり前になっているんですけど、日本だとまだまだ普及していないので、そういうところを増やしていきたいですね」
将来的には、賃貸物件情報サイトに並ぶ写真の中に、家具ありと家具なしの両方の画像が当たり前のように表示される——そんな未来を見据えているとのことでした。
おわりに
一発勝負の収録現場から、放送後の地道な営業成果まで、完全ALLという華々しい結果の裏にある堅実な歩みが印象的なインタビューとなりました。
「認知拡大のためなら大きなお金はいらない」という言葉に、川上さんの経営者としての芯の強さが垣間見えた取材でもありました。
今後の「デジタルステージング」の広がりにも注目です。
この記事を書いた人
九条辰季
「自分らしく生きる」をモットーに、Webマーケティング記事や広告・デザインまで幅広く執筆する多趣味、雑食系ライターです。 自身の経験をもとに、みなさんが彩りあるキャリアプランを描くお手伝いができればと思います!


























