【女子高生2人が語るビジネス Vol.3】ディズニーを作った二人の兄弟

岩本和代

【登場人物】
えま……17歳の女の子。高校2年生。好奇心旺盛だが、他力本願。楽しいことが好き。

つむぎ……17歳の女の子。高校2年生。えまと同じクラスで仲がいい。分からないことはすぐに検索するタイプ。いつもえまに振り回されている。

ディズニーランドに行きたい~!!


急だね。なんでディズニー?


ディズニーに行きたいというのに、急も何もなーい! 毎日だって夢の国に行きたいもん


まぁ、楽しい場所だよね


でしょー。でも、入園料が……


高校生には辛い出費だよね。バイトすればいいんだろうけど


ぐっ……労働はまだ、我には早すぎる……


あぁこの前、コンビニのバイトクビになってたもんね。普通、あんなに寛容なコンビニでクビになることないのに


あぁ、誰か私を夢の国へ連れてって!


……はぁ


でもディズニーランドって、普通の遊園地とも違って、あの世界観がいいんだよねー


うん、それはわかる


あれってどんな人が作ったんだろう? たしかウォルト・ディズニーって人だったよね?


……それはまた、私に調べろと?


つむぎちゃ~ん


はいはい、わかったわよ。暑苦しいから抱きつくなって


それでこそ、つむぎん♪


変な名前で呼ぶな!


で、さっきの質問だけど、ディズニーって、ウォルト・ディズニーって人が作ったんだよね?


そうだよ。でも彼の本名は、ウォルターだったらしいけど


ウォルター? 若干変えたんだ


いや、ウォルターが本名で、ウォルトは愛称だったらしい。まぁあだ名みたいな感じだね


つむぎんって呼ぶのと同じってことか


そうだけど。そうだと言いたくないなぁ……


じゃあ私も親しみを込めて、ウォルトと呼ぼう♪


うん、まぁいいんじゃない?


ウォルトがランドを作ったんだね! どうしてテーマパークを作ったんだろう?


それは色々な理由があるけど、娘たちと楽しむ場所が欲しかったからというのもあるみたい


えぇっ! いいパパじゃん!


週末に2人の娘を連れてロサンゼルスにあった近所の遊園地に行ったものの、当時の遊園地って不潔だし、子ども向けばかりで大人は楽しめなかったらしいよ


不潔なのは綺麗にして欲しいけど、子ども向けだけじゃイヤって、ウォルトも楽しみたかったんだね


家族全員で一緒に楽しめる場所が欲しかったってことだと思うけど


よく言えばねー。でも、そういう性格の人だったから、ディズニーができたんだもんね!


というより、ディズニーが会社になった時って、初めテーマパークは作ってなかったみたいだよ


えっ!? そうなの!? じゃあ、何屋さんだったの?


アニメーション映画だね。これを作っていたから、テーマパークにも着手したっていうのがあるらしい


あぁ、確かに! ディズニー映画ってあるもんね。そっか、映画の方が先だったんだ。ウォルトはアニメを作っていたってこと?


そうだね。クリエイターとして物語を創作していたらしい


親近感!!


いやいや、クリエイターの意味わかってる?


もちろん! だからこその親近感!!


……そう。ウォルトって子どもの頃から絵を描いていたらしいよ


子どもの頃からっていうと?


1901年12月5日にシカゴで生まれて、シカゴ美術館付属学校でアートを習っていたらしい。


あと学校に行く前の4年間に、ミズーリ州マーセリンの農場で過ごしていた時期があったんだけど、それがウォルトの理想の故郷だったんだって


そういえば、ディズニー映画って都会ではなくて、田舎が舞台になっていることが多いもんね


農場の動物と遊んだり、近くを走る蒸気機関車をながめていたりしていて、これが大きく影響しているっぽいね


その当時から絵を描いていたの?


そうみたいだよ。近所の医者の馬を描いてお小遣いを貰ったり、家の壁にタールで落書きをしてお父さんに怒られたりもしているし


怒られてるんだ。絵を描くことを応援してくれた人じゃなかったの?


違うみたい。お父さんは厳しい人だったし、過酷な労働を強いる人でもあったらしい。でも、豊かな自然の中で夢想する時間もあったから、対照的な時間を持っていたということになるね


何か分かっちゃった


ん?


やっぱり、ウォルトと私は似てるよ。大人たちから強制的に窮屈さを強いられてきた幼少時代。その結果、大人でも楽しめる場所を……夢の国を作りたいって思ったわけでしょ?


えーと。ウォルトに関してはそうかもね。えまは先生に言われた宿題も忘れるし、バイトもクビになる奔放ぶりだから当てはまらないけど


えぇ~一緒だよー。で、で? アートの学校に行った後は、絵描きになったの?


ううん。その後は、第一次世界大戦がはじまって赤十字の救急部隊として活動してるね


また戦争かー。この時代の人たちって、みんな戦争を経験してるよね


そうだね。時代が時代だから。でも、戦場へは自ら志願しているみたいだよ


そうなの?


ほら、お父さんが絵を描くことに反対してたじゃない? さっき言ったアートの学校だって、仕事の傍ら土曜日にスクールに行っていたぐらいだし


ということは、父親から離れるために志願したってこと?


そうなるね。ウォルトが乗った救急車は、漫画で埋め尽くされていたという逸話も残っているぐらいだし


そこで父親に怒られずに書いていたってわけね


そうだね。で、第一次世界大戦後に新聞漫画家を志したんだけど、採用されず、お兄さんのロイの紹介で広告デザイン会社に就職して、アブ・アイワークスと出会ったらしい


おっ! お兄さんは、ウォルトの味方なんだね! で、そのアブ・アイワークスって誰?


ウォルトとは絶交と復縁を50年繰り返したパートナーだって。そしてこの人が、ミッキーマウスの生みの親とも言われている人で、アニメーション史上最も偉大なアニメーターと言われているみたい


ミッキー!


デザインはアブが作り、性格付けや魂を入れたのはウォルトと言われているらしい


なるほど、じゃあウォルトだけだったら、ディズニーはできていなかったんだね


そうだね。でも、ディズニーの会社を作るには、もう1人重要人物がいるよ


誰?


さっき少しだけ話に出てきたロイさんだね


お兄ちゃんも参戦するんだ!


時系列で話をすると、ロイが紹介した会社でウォルトはアブと出会い、初めは2人で会社を立ち上げるんだけど、一か月で資金不足になって失敗。そこで一旦アブとは別れて、ウォルトは何回か会社を立ち上げるんだけど失敗


もうどうしようもないとなった時に、当時ロサンゼルスにいたロイを訪ねて、共同経営を申し込み、ディズニー・ブラザーズ・カートゥーン・スタジオを立ち上げたんだって。これが今のディズニーの原型だね

おぉ、なんか色々急展開! ディズニーって、兄弟で作った会社だったんだね。マクドナルドと同じ形式だー。こっちは弟主導っぽいけど


そうだね


でも、どうして急にウォルトはロイを訪ねたの?


ウォルトの創造性は天才的だし、クリエイターとしての実力も申し分ないんだけど、経営となると話が別だったんだって


それに対して、ロイは銀行員だったから数字にめちゃくちゃ強かったというのもあるね


作り手と経理ということだね。あれ? あのすごいアブって人はいないの?


ううん。ウォルトとロイが2人でロサンゼルスで会社を立ち上げた時に参戦したみたいだよ


おぉ、じゃあ最強メンバーがそろったんだね! あれ? でもお兄さんは、銀行員だったんでしょ? 弟のために会社を辞めたの?


あー、それがね。彼がロサンゼルスにいたのは、入院していたかららしい


入院!? ケガとか?


いや、結核だって


じゃあ、弟のために一緒に会社を作っても、長生きできなかったの?


それがさー。これ、本当の話なのか分からないんだけど、結核を患ってたものの、ウォルトに一緒に会社をやりたいって言われて、一念発起し、結核を治しちゃったんだって


えー!?


しかも、そのあと再発もしてない


すごいね。そんなことあるんだ


というか、ロイは結局、ウォルトよりも長生きしているし。弟のことを守りたいっていう思いが、病気を打ち負かしたんだろうね。


ロイは小さい頃から、ウォルトの不遇を見てきているし、一緒に頑張ってきた人でもあるから


あー。問題のある父親ね。今だったら幼児虐待になってそうなんだけど


確かにね。ところで、えまはディズニーの第一作目のアニメーションは何だと思う?


一作目! めっちゃ気になるけど……やっぱりここは王道のミッキーの映画?


ミッキーが登場するのは、もうちょっと後だね


じゃあ何だろう? ディズニーっていったら、シンデレラとか白雪姫とかが初期のイメージだけど


それももっと後だね。最初の作品は、アブと2人で会社を作っていた時に一緒に作っていた「アリス・コメディ」なんだって


アリスって、不思議の国のアリス?


ううん。原作をもとにした作品ではあるけど、ウォルトが作ったドタバタ劇だったんだって。しかも、実写とアニメが融合した物語だったらしい


えっ!? すごくない? これ、めっちゃ昔の話だよね?


ディズニーの会社で出したものとしては、1923年のことだね。会社ができたのがその年だから


えー! それ見てみたいんだけど。絶対面白いやつじゃん


だよね。一応、見ることは出来るみたいだよ


後で探してみよー。で、ミッキーが誕生するのはいつなの?


ずっと気にしてるよね


当たり前じゃん! やっぱり、ディズニーを語る上でミッキーは外せない!


ミッキーが誕生したのは1928年だよ。その頃、ディズニーが作った「しあわせウサギのオズワルド」というアニメーションの版権を奪われ、しかもアニメーターのほとんどが引き抜かれたという事件があって……


え……順風満帆じゃなかったんだね


裏切りに遭った帰りの列車の中で、新しいキャラクターを考えた時に、過去の職場で走り回っていた飼いネズミのことを思い出したの


それがミッキー?


ウォルトはモーティマー・マウスっていう名前にしようとしたらしいんだけど、一緒の列車に乗っていた妻に「モーティマーは気取りすぎて可愛くないから、ミッキーとかはどう?」って言われて、その名前が採用されたみたい


確かにモーティマーじゃ言いづらいし、可愛くないもんね


で、ほとんどのアニメーターが引き抜かれても、最後まで残っていたアブにミッキーのスケッチを見せて、今のデザインになったそうよ。


そして、ミッキーが登場する世界初の映像と音声が同期したトーキーアニメーションとして公開されて、爆発的な大ヒットになったんだって


アブー!! そして、ミッキー! あ、でもまだ、テーマパークには辿り着かないんだね


ディズニーが作ったテーマパークが完成したのは1955年だからね。カリフォルニアにディズニーランドを作ったんだってさ


ミッキーが誕生したのが1928年だから、27年後かぁ


そうだね。で、ウォルトがテーマパークを作ったのは、子どもと遊ぶ場所が欲しかったというのと、アニメーションの限界を感じていたからというのもあるみたい


限界?


映画って一度公開されたら修正できないでしょ? でもパークの場合は手を入れることができるし、常に進化や成長ができるというところに魅力を感じたんだよ


めっちゃ前向き~。私だったら、完成したものには手をかけたくないけど


えま…。ウォルトはそれもあって、フロリダにテーマパークを作ってから11年は、そこで寝泊まりもして、パークの様子を見ながら改善をしていったらしい


すごい……


あとは、スタジオ見学に来る人も結構増えていたものの、アニメーションを作っている現場は地味だから、これも何とかしたいというふうに思ったっていうのもあるみたいだね


なるほどねー。あれ? でもさ、アメリカにあるのって、ウォルト・ディズニー・ワールドっていう名前じゃなかったっけ?


お、気づいた?


え、何々?


ウォルト・ディズニー・ワールドはフロリダにあるパークの名前で、さっき言ったのはカリフォルニアにあるパークなんだよ


あー、別物なんだ。じゃあフロリダの方が先なの?


ううん。カリフォルニアが最初。フロリダの方はね、実は完成したところをウォルトは見てないんだ


どういうこと?


フロリダの土地を購入し、詳細な計画を立てたものの、パークが完成する5年前に亡くなったから


えぇ~!?


肺がんだったらしい


そうなの?え、じゃあ誰が後を継いで完成させたの?


お兄さんだよ。ウォルトがなくなった時、ロイは73歳で引退しようとしていたんだけど、引退を撤回。ウォルトが始めたことは私が終わらせると宣言して、周囲が辞めようとしていたフロリダプロジェクトを続投したの


兄~!!!


自分の健康を顧みず、湿地帯だったフロリダの土地を「魔法の王国」に変え、完成させたんだって


本当はカリフォルニアと同じように「ディズニー・ワールド」という名前にする予定だったんだけど、ロイがウォルトの名前を世界に忘れさせたくないということで、開園式典では弟への語りかけもしたと言われてるみたい


兄~!!!


そして、開園を見届けて、公式に引退した2か月後に亡くなったんだって


兄~!!!!


えま、うるさい


いや、だってさ。ロイ兄さん、めっちゃいい人じゃん!!


まぁでも、結核だったロイに一念発起させたウォルトの存在というのもあったし、本当に信頼し合っていた兄弟だったんだろうね


もう、涙なしでは聞けないよ~。私、もう一度コンビニバイトしてみる!一か月も働けば、ディズニーランドとシーに行けるし。やるぞ~!!!


あ、ちょっと、えま!? まだ授業残ってるんだよー。教室から出ていかないでよー

次へ▶近日公開予定

前へ▶【女子高生2人が語るビジネス Vol.2】マクドナルドの誕生秘話とは?

《参考資料》
ウォルト・ディズニー・カンパニー/アーカイブ・歴史ページ(公式)
D23(ディズニー公式ファンクラブ)
ディズニー・ファミリー・ミュージアム(公式メディア)
ウォルト・ディズニー・ワールド公式リゾートニュース
歴史的な伝記資料(「Walt Disney: An American Original」等)

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この記事を書いた人

岩本和代

2016年よりフリーのライターとして活動中。 インタビュー取材、シナリオ執筆を得意としており、幅広く執筆をしている。